2013年12月10日火曜日

8月14日(水) クレイトン~アートセンターワークショップ~  


まちかどの壁画
 この日は、今回の米国研修旅行の最後の山場である、1000アイランズ アートセンター(TIAC)でのデザインワークショップに参加する日です。
アートセンターに着いてご挨拶した後、午前中はアン先生やノーマン・ワグナーさんの案内で、クレイトンの町の歴史を聞きながら街並みを歩いたり、チーズショップなどを覗いて散策を楽しみました。クレイトンは古い町で、1800年頃から水運と陸運の結節点として大変栄えた町だそうです。港の方の街角には壁一面に描かれた大きな壁画がありました。そこには、セントローレンス川に面した港の、船着き場と一体になった鉄道ターミナルが描かれており、船のそばで煙を吐いている機関車やの昔の人々など、にぎやかだった往時を偲ばせていました。
ツリーハウスをデザインする子どもたち
昼前にはアートセンターに戻り、午後の仙台の復興活動発表と茶道体験、折り紙ワークショップの準備をしながら、2階の部屋で行われていたアーキテクチャーデザインキャンプで、子どもたちがツリーハウスをデザインしているところを見学しました。
このキッズキャンプ「アーキテクチャー・デザインと環境」は、9歳から12歳までの子どもを対象に、812日から16日まで(9時~13時)行われたもので、アン先生とキャサリン・コルバ先生が指導にあたっていました。狭い会場いっぱいに10名ほどの子どもたちが、用意された厚紙と木の枝の上に、自分のデザインした楽しそうなツリーハウスの模型を製作中でした。きのう、ボルト城で「建築の宝ものさがし」を一緒にした子どもたちも居て、(おっ、やってるね!)とお互いニヤリ。
キャサリンさんに以前の子どもたちの作品も見せてもらったら、なんとそこには野菜の断面の絵が!そのワークショップも見たかったです。
ところで、お昼のランチにサプライズがありました。祖父母が日本からの移民だというジュディ・コルベさん(前高校教師)が、私たちのためになんと、海苔巻と味噌汁を作ってきてくれたのです。私たちが大喜びしたのは言うまでもありません。
さて、そうこうしているうちに午後の部に突入です。
仙台の復興活動に耳を傾けるクレイトンの人々
アートセンターの1階会場には、30名ほどの人々が集まっていました。前半は、仙台の歴史的建造物や亘理町荒浜での震災復興活動、須賀川市での教育現場における放射線への対応等について発表しました。会場のみなさんは熱心に耳を傾けて下さいました。
後半は日本文化の紹介で、折り紙と茶道体験のワークショップです。実はこれの準備で夕べのメープルグローブは、大笑いの渦だったのです。私たち全員がこういう日本文化紹介は初めて。知恵を寄せ合って前の晩に急きょ、準備と付け焼刃のオケイコとなりました。折り紙は、鶴や舟、百合の花など折れるものを総動員して模造紙に手順に従ったモデルを貼りつけました。みんな汗だくでした。更に大変だったのは茶道体験の準備。セツコさんが煎茶道を習っているのみで他の皆さんは知識ゼロです。トランクに入るだけ詰め込んできた道具と抹茶でにわか稽古。「はーい!一斉に茶筅を上下にふるって!」「しゃかしゃかしゃか・・・、うまくできませーん。」なんと、その方は茶碗のなかの茶筅を縦にして、上に持ち上げたり、下に押し付けたりを繰り返しているではありませんか!「日本人に教えてるんじゃないみたいー!」という訳で、大笑いの連続でした。ヤレヤレ。
さて、本番の様子は裕司さんの文をお読みください。
こうしてアートセンターでのデザインワークショップを楽しみましたが、その日の夜には、素晴らしい建物での素敵なピアノコンサートを聴くというおまけもありました。
演奏はクリストファー・オライリーという人気ピアニストで、イー・ヤン・チェンを特別ゲストに招いてのコンサートでした。ショパンからラディオヘッド、ピンクフロイドと曲目もバラエティに富んで、すごい演奏会でした。会場はクレイトンオペラハウスです。4階建てのれんが造りのこの建物は、1900年代初期にアメリカで流行ったボードビル劇場で、2003年サウザンドアイランズ パフォーミングアーツ基金(TIPAF)とクレイトンのまちがこのオペラハウスの改装と復興を決め、2007年に改装されたそうです。以後、TIPAFがオペラハウスのイベントの運営をしていますが、そのやり方がユニークで面白いです。運営に賛同、支援してくれる人(パトロン)をその寄付の額ごとにレベルを分けて、“巨匠”-2人までゲストを呼べる、“指揮者”-中央の席を選べる、“コンマス”-中央ボールルームへ2人行ける、とか特典を用意しているのです。ちなみに後日話に出てくるテッドさんご夫妻は“巨匠”、アン先生ご夫妻は“指揮者”でした!

  日本文化の紹介~茶道と折り紙の体験~
茶道の体験コーナーでは、最初に抹茶のお点前の実演をお客さんに見てもらいます。現地で茶道のお点前をどのように行うのか。床に正座はさすがに難しいので、イスに座りテーブルの上で行うことになりました。お湯をどうやって用意するか、茶道具を洗う場所はあるか、ということも懸案でしたが、会場のキッチンにある電子レンジと流しを使わせていただけたので、そこでお湯を沸かしたり茶碗を洗うことができました。役割分担は抹茶を立てるのがセツコさん、飲む役が僕、となっており、これは前日に急遽決まったものです。メープルグローブのキッチンでセツコさんによる茶道の臨時講習が開かれ、僕はにわか仕込みで作法を教わり本番に臨みました。30席ほどの客席は満席で、客席正面の見やすい位置に茶道具の置かれたテーブルとイスが設けられました。セツコさんと僕が入場すると拍手で迎えられ、一礼して着席。
 実演が始まると話し声やざわつきが一切消えて、茶筅のシャカシャカという音だけが部屋に響いていました。思っていた以上にお客さんが真剣に見ているのがわかり、この辺りからかなり緊張していました。
やがて抹茶が出来上がり、僕の前に出されます。ここでいきなり飲んでは駄目です。「お点前、頂戴いたします」と宣言し、茶碗を手のひらで包むように持ち上げ時計回りに回してから、一口飲みます。「結構な、お馥(ふく)加減でございます」と感想を述べ、残りを飲み干したら、茶碗の向きを戻してテーブルに静かに置いて一礼、おわり。言葉や所作の意味は、となりで敦子さんが英語で解説しており、みなさんふむふむと熱心に聞き入っていました。
煎茶のお点前
実演が終わった後は、お待ちかねの抹茶の体験の時間となります。テーブルにイスを6席横一列に並べ、最大6人同時に抹茶をお出しする体制をととのえました。希望者は空いた席にどんどん座ってもらいます。抹茶が出てくるまでの待ち時間は和菓子(一口サイズの塩羊羹)を召し上がっていてもらいます。その間テーブルの向こう側では、我々が手分けしてお茶を立て、茶碗を洗いにキッチンと会場を往復しつつ、どんどん抹茶をお出ししていきます。皆さん見よう見まねでお辞儀をしたり茶碗を回したり和気藹々と楽しんで体験されていました。抹茶や和菓子がアメリカのお客さんの口に合うかどうか少し気がかりでしたが、残す人もほとんど居らず、美味しく召し上げっていただけたようで安心しました。
 抹茶に引き続いて、煎茶のお点前の体験も行われました。煎茶用の和菓子は和三盆の干菓子をお出ししました。小学生ぐらいの子も参加し、さらにリラックスした様子で楽しんでいただけたようです。
折り紙工程の見本
茶道のお点前と並行して、折り紙作りが会場の後ろで行われていました。作業台となるテーブルの上に作品の完成見本と色紙を置いておき、好きなものを選んで折ってもらう方式ですが、お客さんが自力で完成までたどり着けるように、途中工程の見本も展示することにしました。この見本は前日の夜に皆で手分けして準備しました。
まず作品完成までの工程を10段階ほどに分け、すべての工程の見本を作ります。それらを一枚の台紙に順番どおりに並べて、糊付けして出来上がりです。折り紙の教本の中から「かぶと」「ふね」「つる」の3種類を選んでそれぞれ作りました。
途中過程の見本は効果的で、当日も小学生からお年寄りまで、みなさんが自分で折ったおりがみをお土産として持ち帰っていただけました。上記の3種類のほかに少し難しい作品もいくつか展示しており、そのような作品に挑戦したい人のために折り方を教えるお手伝いをしました。僕は3人のお客さんにアヤメの折り方を教えましたが、全員完成させることができました。そのなかの1人の若い方はとても上手に折られていておどろきました。
茶道、おりがみの体験ワークショップはいずれも大好評でした。
とくに、幅広い年齢層の参加者に楽しんでもらえたのが非常に良かったと思います。
折り紙は言葉が十分に通じなくても教え合うことができるのが素晴らしいと感じました。

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