2019年6月29日土曜日

■ ニューメキシコ大学&ラルース/613日(木)
 ニューメキシコ最後の一日は、アルバカーキに滞在しました。
午前中は、ニューメキシコ大学キャンパスへ。ジョン・ゴー・ミームが設計した、スパニッシュ-プエブロリバイバル様式のジマーマン図書館を見学しました。ミームは、1933年から退職するまで大学の公式建築家として多くの建物を手掛けたそうですが、最も有名なのが、1938年に建てられたこの図書館です。低層の建物が水平方向に重なり合いながら、書庫を囲むように建っています。壁は上方に向かって傾斜し、エッジは丸みを帯びていました。すべての屋根はフラットで、一部パラペットは緩やかに波打っています。西側にある長いポーチには、庇状の屋根の下がり壁に丸太のビガが突き出し、屋根の桁梁は繰型で装飾され、それらを丸柱が支えていました。
内部に入ると、受付のカウンターをはじめとする調度品はいかにもハンドメイドらしい作りで、天井のビガや2段コーベルの繰型とともに、木彫で模様が施されていました。また、金属板を加工した間接照明器具や書架上部の壁画など細部まで丁寧に作り込まれていました。
もうひとつのミームの作品、1962年に建築された、卒業生記念チャペルに行ってみました。ファサードには木製のバルコニーがあり、梁や手すりなどに、繰型や木彫が施されていていかにもミームらしいデザインとなっていました。また、バットレスや外壁の雰囲気が、サンミゲル教会やサンフランシスコ デ アシス教会を彷彿とさせていました。
ジマーマン図書館エントランスに向かう
西側の外観
手前に長くのびるポーチが見える
後ろの建物もブロックごとに重なりながら水平にのびている
図書館内部
木彫が施されたハンドメイドの調度品が見える
金属板を加工した照明器具と壁画
壁画には、ニューメキシコの風景を背景にスペイン人と先住民が手を携えている
ようすや、治療や研究にあたる医療従事者のようすなどが描かれている


図書室内部
天井の二段コーベルの繰型が美しい
卒業生記念チャペルのファサード
午後は、テーラー先生が私たちのためにパーティーを開いてくださるというので、先生の家があるラルースへ向かいました。ラルースは、1967年、デベロッパーのレイ・グラハムと、建築家のアントワン・プリドックなどが、リオグランデ川西側のメサの上に開発したプロジェクトです。
メサの地形に逆らうことなく等高線に沿って東から西へ緩やかに上りながら、12階建てのテラスハウス群がクラスター状に配置されていて、どの住戸からも、メサの草原とその先のボスケ(リオグランデ川の両岸に延びる森)、遠くに見えるサンディア山が望めるようになっています。
建築材料は、一部窓の“まぐさ”にコンクリートを使っているものの、日干し煉瓦と木材が主体で、他の材料もすべて地元で生産したもので、壁に使われている日干し煉瓦も、のちに生産が追いつかなくなり工場に委託するまでは、ここの土を使ってこの場所で手作りしていたそうです。メサやボスケに自生する植物も大切にしていて、実際、ボスケから若木がラルースに移植されたそうです。プリドックは、テーラー先生とのインタビューのなかで、「ラルースは、この土地に従い、この土地に沿って流れるように立っている。土地と切り離された存在ではなく、土地の一部になっている。私は、それをエコロジカルプランニングと呼んでいる。」と言ったそうです。
パーティーが始まる前、ご近所のヨーコさんにラルースを案内していただきました。散歩道やテニスコートやプールもあり、広場には果樹が植えられ、小さい畑もあり、そのどこからも眺められるメサと山。ヨーコさんの話を聞きながら、ここに住む人たちは、メサや山や雲や月を眺め、時にコヨーテの遠吠えを聞き、散歩やテニスや水泳をして体を動かし、作物を育てて食べるという暮らしができるこの環境を心から楽しんでいるのだと思いました。
なだらかな起伏のある斜面に建つテラスハウス
アドビ建築の茶、芝生の緑、空の青、雲の白が見事に調和している
ラルースから見たメサの草原とサンディア山

畑にはネギやラズベリーなどが植えられていた
先生の家は、ラルースの東端、メサが目の前に見えるところにあります。
室内はスキップフロアになっていて、リビングルームはエントランスやダイニングルームから階段で下がる形になっています。リビングルーム西側は、大きい開口部で外部のパテオにつながっています。ここからの眺望は最高でした。室内はどこもかしこもきれいに整頓され、白い壁には絵画などが飾られ、まるでサンタフェのアートギャラリーのようでした。
エントランスの西側にはオフィスがあり、その壁には、西暦年だけが書かれたカレンダーが張ってありました。先生が生まれた1933年から2019年まで自伝を書くために準備をされたということをお聞きしました。先生はこれまでの人生の半分以上を建築と子供たちとともに歩んできたのだと感慨深く拝見しました。
夕方、招待客が次々に集まってきました。オースティンさんとカタリーナさんご夫妻、ジェンさんはじめ15名がテーラー先生を囲んでパーティーの開始。食卓は、先生が畑で栽培したえんどう豆や、ヨーコさん手作りのお寿司やローストビーフなどが並び、ビールやワインで乾杯。私たちからは、昨年の立町小学校4年生の西公園をデザインする学習や、5月に行った台原小学校でのISSをデザインする学習のようすなどを写真で紹介。皆さん興味深そうに耳を傾けてくださいました。
食事のあとは、餅アイス、パウンドケーキ、私たちが持参した“おかき”など食べきれないくらいのデザートで盛り上がりました。
あっという間に楽しい時間が過ぎ、お別れの時間がやってきました。
またいつ会えるかわからなかったのですが、“Next Time”を約束してラルースをあとにしました。
ニューメキシコでの数日間は、環境から離れる(Apart From)のではなく、環境の一部(A Part Of)となる、という先生の言葉を再認識した旅となりました。
オフィスの壁に張られたカレンダー
リビングルームでテーラー先生のお話を聞く
窓の奥はパテオ。パテオの向こうにメサとボスケの森が広がる

*参考文献:“The Legacy of La Luz”( アン・テーラー/シンシア・ルウェッキウィルソン共著 ラルース50周年を記念して2018年に出版)

10日間の旅を終えた私たちは、14日、アルバカーキ・サンポート空港から帰国しました。
 滞在中、テーラー先生、酒井さん、ジェンさん、リンさん、メレディスさん、キムさん、スージーさん、マライアさん、オースティンさん、カタリーナさん、ヨーコさんほか大勢の皆さんに大変お世話になりました。
心より感謝と御礼を申し上げます。

2019年6月26日水曜日

台原小学校3年生総合学習「台原の達人になろう〜土鈴づくり窯出しワークショップ〜」

79日(火)
 きょうは堤町まちかど博物館の体験窯で焼いてもらった土鈴を窯から出す日です。佐藤吉夫、明彦両師匠にお世話になりました。
 曇り空の肌寒い中、子どもたちが水筒と生活科バッグを持って堤町まちかど博物館にやってきました。
 はじめにネットワーク仙台より、博物館前の通りは奥州街道といって江戸日本橋から青森三厩まで続く大きな道だったことや、堤町では江戸の昔からここに住んでいた足軽たちが焼物を作っていたこと、2011年の大震災で登り窯の半分が壊れたけれどたくさんの人の力で直したことなど話しました。
震災で壊れた登り窯をみんなで直した話などを聞く
その後、3クラスに分かれ、登り窯、2階展示室、堤人形工房「つつみのおひなっこや」を順番にまわりました。
登り窯では、窯にどのような力が働いてトンネルのような形を保っているのか、体を使って確かめました。二人一組になってアーチをつくり、お互いの手で支え合っていることや足で踏ん張っていることを体で感じてみました。また、窯は坂を利用して造られていて、坂の下にある焚口に火を入れると、窯の中にある穴を伝って上のほうに火がのぼっていく仕組みになっていること、窯の壁に使われているレンガのうち古いものは、焼物の釉薬が飛び散り溶けて表面がツルツルになっていることを聞いたあと、窯のなかに入り探検。火が通る穴や古いレンガを見つけては歓声をあげていました。
窯に働く力を感じてみよう
「火が通る穴を見つけたよ!」
 2階の堤焼展示室では、大きい水ガメの前で何に使われたかを聞くと、「米や味噌を入れるもの」や「風呂」との返事。昔は水道がなかったので、井戸から水を汲んで溜めておき、料理や洗い物に使ったものであることを話すと、「今は便利でよかった」とほっとしたような顔をしていました。
 ここにあるカメなどの堤焼は、堤町だけではなく、台原小学校で採れた粘土も使って作られていたことを話すと、自分たちの学校と堤焼に関係があったことをはじめて知った子どもたちは、「えーっ」と驚いていました。
水道がなかったころに使われていた水ガメの前で
 堤人形の展示室では、たくさんの人形がぐるりと囲んでいるようすを見て、「わー、すごい」「こわーい」などと声があがりました。それらの人形のなかに、「谷風」の人形が飾ってあるのを見つけました。この人形は仙台出身で江戸時代の名横綱であることや、250年前に作られたものであることをはじめて教えてもらった子どもたち。じっと顔を覗き込んでいました。
子どもたちは、谷風の後ろの壁にある黒い手形を発見。この部屋を使っていた職人さんたちがイタズラでつけたものであることを聞いてくすっと笑っていました。

谷風の人形と手形に見入る
おひなっこやでは佐藤吉夫師匠がお話をしてくれました。
堤人形は、堤町で作るので堤人形といわれるようになったこと、はじめは、お稲荷さんや恵比寿さんなどの宗教的なものや金太郎、天神様(菅原道真公)などを作っていたこと、お店にあるのは今150種類、人形の型は1759点もあるということなどを聞きました。
 子どもたちは、持ち帰った土鈴を学校で絵付けすることになっています。そのことを聞いた師匠は、絵の具を少し濃く溶いて塗るようにアドバイスしていました。
 
堤人形の歴史や特徴についてのお話を聞く
最後は窯出しです。一つひとつ両手で大切に受け取りました。ユニークな形のものもたくさんありましたが、ほとんど割れずみんなで胸をなでおろしました。
焼き上がった土鈴を大切そうに受け取る

堤焼の歴史をたくさん学んだ子どもたち。最後に大きな声で、「ありがとうございました!!」と言って、学校に戻っていきました。