2022年5月29日日曜日

建築と子供たちプロジェクト2022「視覚言語とコミュニケーション③」

 2022年4月24日(日)

この日のワークショップ(開催概要・シャボン玉の一生ネジ巻おもちゃの仕組み図)を終えた参加者の感想と、アン・テイラー先生からのメッセージを紹介します。

<子供たちの感想>

  • おもちゃのしくみをかんがえるのがむずかしかったです
  • しゃぼん玉を丸とやじるしで表すのを、やじるしの形を変えたりして表せた
  • ねじまきおもちゃのしくみとうごきがどんなんかとか、しゃぼん玉のしぬまえとかをかんがえておもしろかった
  • 〇をかいたのがめちゃくちゃたのしかったです。やじるしを書くのがむずかしかったです。シャボン玉をよく見てかんさつしました
<大人の感想>
  • 色んな年齢の、色んな方々と一緒に受講できるというところがとても面白いと感じました。自分や子どもが課題に取組む過程ももちろんですが、皆さんの作品を見ることで得られるものが沢山あるなぁと大変良い勉強になりました。
  • 自分の考えを図に書き出すことの難しさに改めて気付かされました。【考える→書き出す→再考する】の作業を鍛えて、アイデアの整理に活かしたいなと思います。
  • イメージを視覚化するのが頭の体操になってよかった。2つ目の課題が何を表現すればいいのか、わかりにくかった。すべての動きを繋げて描くのか?と思ったが、回答事例は各々の動き(しくみ)を別々に描いてもよかったようなので。
  • 子供には難しそう…と思ったことを、小さい子(2年生)ほど気負いもなく取り組めることに驚きました。5年生は、うまく描けない…と引っ掛かっていて、その違いにも驚きました(年齢のことだけではなく性格にもよるかもしれません)
  • これまで、動くものの仕組みを考えて描くということをしたことが無かったのでとても新鮮でした。作品の例をほぼ見ずに取組むので、どう描いていくのか考えるのが難しかったです。でも例を見てしまうと、その後の発想まで手本に寄ってしまうと思うので、やはり例は先に見ない方がいいなと個人的には思います。
  • 初めに、どのようなことをしに行くのかを子供に説明するのが難しかった。始まりの説明が難しい言葉ばかりで、子供たちが楽しめるか不安になった。動画の日本語字幕が、子供達には理解できないのでは?と思った。大人の心配をよそに、すんなりと絵に取り組む子供達を見て楽しかったです。また、自分の描けなさにびっくりしつつ、わからないけど描いてみる、という経験が面白かった。
  • 率直な感想は、ハイブリッドワークショップの可能性を実感した。設備環境が整っている場所が前提となるが、活用に慣れれば、活動範囲に縛られず、効率的なワークショップ運営・開催にもつながるのでは感じた。パソコンを使っての講義は、大きな声で話す必要もなく、デジタル資料を上手く活用すれば、対面で行うよりも教えやすいと感じた。対面側の指導者やスタッフと協力して、ビデオやマイクを使いこなせるようになれば、リモートでも参加者の様子をそれなりに把握できるのではと感じた。


<テイラー先生から参加のみなさんへ~おもちゃの仕組み図を終えて~>


完璧である必要はありません
あなたは、今いろいろ考えているでしょう
私たちは、その思考のプロセスに関心があります
思考力のある人が求められる時代は確実に来ています
いつの日か、エンジニアになりたい人もいるでしょう
建築家や、何らかのデザイナーになりたいなどの職業選択を
あなたの先生が手伝ってくれることもあるでしょう

私たちの社会が必要としていることはたくさんあります
そして、それらのすべては持続可能なもので
ゴミ捨て場に行ってしまったり、土に埋められたりしません

クライアントについて考えなければなりません
だれがクライアントで、そのクライアントのニーズ・需要に合わせて
どのようにデザインをするか考慮する必要があります

建築と子供たちプロジェクト2022「視覚言語とコミュニケーション②」

2022年4月24日(日)

● ネジ巻おもちゃの仕組み図

シャボン玉の次は、ネジ巻おもちゃの登場です。今度は、おもちゃを動かしている内部の仕組みを考えて描くという課題です。

最初にテイラー先生のビデオを視聴してもらいました。除雪機、カブトムシ、宇宙船などのネジ巻おもちゃの前で先生は、「これらのおもちゃも、エンジニアがデザインしないといけませんね。ですので、おもちゃのエンジニアになったつもりで考え何がこのおもちゃを動かしているのか、その仕組みを想像し仮説をたててほしいと思います」と呼びかけました。

永野さんも、ハエをのせて舌を出したり引っ込めたりしながら歩くカメレオンのおもちゃを取り出して「何がこのカメレオンを動かしているのかを考えてください」と問いかけました。しかし、子供たちは、話はそっちのけで、おもちゃ遊びに夢中。ハネをパタパタ動かしながら前に進むトンボ、ひっくり返りながら行ったり来たりする車などと、ひとしきり遊んだあと描き出しました。ときどき、ジージーとおもちゃが動く音や、ネジを巻く音が聞こえます。ひっくり返りながら動くおもちゃでは、下から飛び出す板でひっくり返り、それが内部の歯車と連動して動くと考えた子、板が飛び出して転がる様子を大きな矢印で描く子など、みんな想像力を働かせていました。

最後に、活動を見守っていたネットワーク仙台の渋谷セツコさんが、「おもちゃの動きを生み出す見えない力を目で見えるように描くという体験をしましたね。きっと明日から世の中のモノが違って見えてくると思います」と締めくくりました。

集中して取り組んでいます

<描いたネジ巻おもちゃ>

後ろにひっくり返る飛行機

ひっくり返りながら前後に動く車

ハネをパタパタさせて動くトンボ

ぐるぐると回ってひっくり返るテントウムシ

体をくねらせて踊る人(前)
体をくねらせて踊る人(後)

<子供たちの作品>
ネジと連動した歯車が、タイヤを動かす歯車につながり、タイヤにつながっている板が飛行機をひっくり返させると考えました


飛行機(上)と車(下)が回転したり、進んでいく様子を太い矢印で描きました

トンボのハネと走る仕組みの動きを別々に描きました

ぐるぐると回るテントウムシの動きを矢印で描きました

<大人の作品(抜粋)>
後ろのネジを巻くとお腹のなかのゼンマイ?がお腹を左右にゆすり、関節がピンになっている頭や腕や足がくねくねと動く

ネジに連動する歯車が、横向きの歯車を動かしてテントウムシがぐるぐると回る

タイヤが回ると、タイヤにつながった棒が上に上がってトンボのハネを持ち上げる

バネの伸縮やゼンマイの回転の力で、飛行機が起き上がって後ろに転がる

建築と子供たちプロジェクト2022「視覚言語とコミュニケーション①」

 2022年4月24日(日)

昨年のオンラインプロジェクトに引き続き、今年度も、建築と子供たちプロジェクト(主催:建築と子どもたちデザインLABO関西、共催:ネットワーク仙台)を実施します。

デザインLABO関西では、今年度から、建築と子供たちデザイン体験教室「MANAVIVA」(“学び”+“VIVA“(スペイン語で生きる)+“場”の意味)を定期的に開催することになり、今回はその第一弾です。

建築家はデザインのはじめに、人や物の動き、音の拡がり方などを簡単な図に描きます。こうした図で表現される〇(バブル)や矢印などの記号は、目で見てわかる言葉なので視覚言語と呼ばれています。今回のワークショップでは、アン・テイラー先生による建築と子供たちデザイン教育体験ビデオの「視覚言語と概略図」を使って行いました。

昨年は、オンラインのみのワークショップでしたが、今回は、対面とオンラインのハイブリッド型です。大阪側が会場のβ本町橋(大阪市中央区本町橋4-8)に、小学2年生2名、小学3年生1名、大人5名の計9名が対面で参加、仙台側は4名がオンラインで参加しました。

はじめに、デザインLABO関西の細田牧江さんから、ルービックキューブと、ルーブリックキューブ註1を比較したパワポを見せながら、「ルービックキューブでは、色ごとにきれいに整頓されるので、国語、算数、理科、社会などの教科に分かれた学習を示すと考えられるのに対して、ルーブリックキューブでは、色がきれいに整頓されていないことから、総合学習を示している。私たちの社会は総合的に出来ているので、そういう学習をやっていきたい」という、建築と子供たちプロジェクト2022の趣旨説明がありました。そして、今日のワークショップをオンラインで指導する永野ますみさんにバトンタッチ。

●シャボン玉の一生

永野さんから、建築デザインでは実際に視覚言語を使って構想を練っていることを説明したあと、最初のプログラム「シャボン玉の一生」に進みました。これは、シャボン玉が生まれてから弾けて消えてしまうまでを描くものです。はじめに、テイラー先生のビデオの前半部分を視聴してもらいました。先生は、「建築家がデザインを考えるときに、ひとつの部屋をバブル(泡)で表し、どこにどういう部屋を配置しようか、などと考えながら、図を描いていきます。それと同じようにシャボン玉もバブルで描いてください。そして、シャボン玉の動きを矢印で表してほしい」と、実線、二重線、真っすぐな線、ぐるぐると曲がった線など、矢印のいろいろな種類を実際に描いて見せました。

「シャボン玉が生まれてから大きくなり、重力の影響で落ちていき、最後にポップとはじけて消えるところまでを描いてください」とテイラー先生

ビデオの視聴が終わるとさっそくシャボン玉の一生にチャレンジです。「シャボン玉は全部で10回吹きます。5回まではただ見るだけで、あとの5回が吹き終わるまでに描いてね」と永野さん。大阪の会場ではシャボン玉が空中をいろいろな方向に飛んでいます。子供たちもよく見て描いている様子が画面から伝わってきました。全員の作品が完成すると発表です。子供たちは「小さいシャボン玉は早くこわれる。大きいシャボン玉はゆっくり落ちる」など鋭い観察眼を披露していました。

註1:総合的な教育とアメリカの学習指導要領ルーブリックを合わせてテイラー先生が考案したもので、色がばらばらに混じっているキューブを指す。

<子供たちの作品>
 


いろいろな大きさのシャボン玉と、それらがどう動いたかを示す矢印の使い方、ポップが良く描けています

<大人の作品(抜粋)>


シャボン玉のゆったりした動きが伝わってきます