【開催日時】平成24年4月22日(日)10:45~12:45
【会場】仙台国際センター
標記大会の分科会「デザインで支える子どもたちの震災復興~生きる力の種をまく地域・学校の取り組み~」が開催され、デザインをキーワードに地域や小学校で取り組んでいる震災復興活動について下記の通り発表しました。
1)子どもたちと創る歴史的建造物の震災復興~仙台奥州街道建築たんけんガイドブックを活用して~
細田洋子(建築と子供たちネットワーク仙台)
ネットワーク仙台からの発表と会場の様子 |
奥州街道沿いの歴史的建造物「堤町まちかど博物館の登り窯(大正7年築造)」と「旧丸木商店店蔵(南材木町・天明元年建築)」が震災で壊れ、その再生に向けたプロジェクトが子どもたちの参画で動き出しています。
このプロジェクトでは、「仙台奥州街道建築たんけんガイドブック」(2011年発行)を活用して、窯を復元するために崩れたレンガにこびりついた土を削ったり、修理する蔵のファサードを飾る「紋」をデザインする学習を行いました。
こうした活動のようすと、その活動を通して子どもたちに「昔の建造物を守っていきたい、自分たちで守っていくことができる」という想いが生まれてきたことなどについて紹介しました。
2)七郷小震災復興学習の創造~自分が元気、まわりが元気、地域が元気~
亀崎英治(七郷小学校教諭)
亀崎先生発表の様子 |
七郷小学校は、昨年の大震災で学区内にも津波が押し寄せ、学校は2千人を超える人々が身を寄せる大規模避難所となりました。こうした経験から、子どもたちに「たくましく生きる力」を身につけさせようと、全校で「ともに立ち上がろう!七郷」を合言葉にした震災復興学習に取り組んでいます。亀崎先生は、東長町小学校のまちづくり学習(2000年度~2001年度)、北六番丁小学校の川環境学習やエネルギー環境教育(2002年度~2009年度)などネットワーク仙台や大学等と連携しながら単元や年間プランをデザインする総合学習を数多く実践してきました。
七郷小学校の震災復興学習では、これまでの学習手法に震災という視点を加えた学習プログラムを開発し実践しています。たとえば5学年では、ゴ―ヤやヘチマのトンネルやカーテンを育て、見た目にも、環境にもよい「緑をふやそうプロジェクト」、震災復興の願いを絵と言葉で表現する「復興絵馬プロジェクト」、現在仮設住宅が建っている地域の公園を仮設住宅の人たちの意見も聞きながらデザインする「7GO公園デザインプロジェクト」など、子どもたちが地域や外部の人たちとつながりを持ちながら、未来に向かって身近な環境を創造する学習に取り組んでいるようすが披露されました。
【関連リンク】
•七郷小HP http://www.sendai-c.ed.jp/~sichi-el/site0002/index.html
吉成小6年生発表の様子 |
菅原弘一(吉成小学校教頭)
+吉成小学校6年生児童
震災の被害が少なかった吉成小学校では、昨年、津波被害の大きかった東六郷小学校に本を贈るプロジェクトに取り組みました。
このプロジェクトは、仙台市が進めている故郷復興プロジェクトの一環として児童会を中心に全校で展開したものです。
はじめに、このプロジェクトの中核として活動した5年生(現6年生)を代表して3名の子どもたちが、市民図書館(本の選定)、保護者や地域(本の購入資金集め)、学習院女子大学伊藤研究室(本の贈り方の助言と資金提供)、建築と子供たちネットワーク仙台(図書箱のデザイン指導)、鈴木功師匠(図書箱の製作)、石川県の皆さん・津山町在住の須齋さん(本の寄贈)など多くの人たちとつながりながら徐々に形に表していくことができた学習の経過と内容について発表しました。
続いて菅原弘一教頭先生から、学習院女子大学と建築と子供たちネットワーク仙台との連携学習を例に挙げて「つながり」を大切にした学習の効果について発表がありました。学習院女子大学との連携では、図書室のないラオスの学校で移動式の図書箱や図書袋が使われていることを知った子どもたちが贈り方の大切さに気付き、本と一緒に図書箱を贈るという相手を思いやる支援につながったそうです。この図書箱に東六郷小の子どもたちが演奏する「黒潮太鼓」の音を描く活動を支援したのがネットワーク仙台です。
この活動では、線や矢印でものの動きや音を視覚言語化したり、「直線」「うず」「放射状」などの「パターン」を使って音を表現したりするデザイン手法を学ぶことによって、発想を支える「知識」や「技能」をトレーニングするとともに、具体的なデザイン手法の枠のなかで思考を活性化させ「太鼓の音を表現する」という難しい課題を解決していくことができた、これは従来の「自由でいいよ」「夢を描きなさい」というようなあいまいなやり方では生まれない学習の効果であるとの報告がありました。そして、これから大切にしたい教育として、「葛藤が生まれるような複雑な状況での判断、複雑さへの耐性が求められる」「頭でっかちでは役に立たない」「実践力 そして,へこたれない心が必要」「チームで取り組み解決する力」を挙げ、こうしたことは、教科書的な“正解”を求めているだけでは解決できず、現実社会(人)の多様な“つながり”の中で総合的に学びながら創造的な問題解決の力を高めていくことが重要であり、そのために教師のデザイン力・コミュニケーション力が求められると結びました。
菅原先生発表の様子 |
【関連リンク】
•吉成小HP http://www.sendai-c.ed.jp/~yosinari-el/koutyou_blog/index.php?UID=1329563831
カテゴリー:震災復興プロジェクト
•東六郷小HP http://www.sendai-c.ed.jp/~higac65/toshodayori/toshodayori24-5.html
発表後は、約60名の参加者の方々から、「障害を持っている子どもたちに教えているが、デザイン学習の方法がたいへん参考になった」「長く活動を継続していることが素晴らしい」など多くの感想が述べられ、子どもたちの参画による環境改善の手法やデザイン学習手法などについて意見を交換しました。