2021年12月25日土曜日

ARCHITECTURE AND CHILDREN ONLINE MEETING 2021 ~オンラインでつなぐ建築と子供たち~③ 講演 part2

 ARCHITECTURE AND CHILDREN ONLINE MEETING 2021
~オンラインでつなぐ建築と子供たち~

2021年10月24日(日) am9:30~11:00 


< 講演「建築と子供たち~創造性を育む教育法について考える~」part 2 >


●スタジオ:創造的な教育とその環境

次に創造的な教育に必要な環境とは何かと言いますと、スタジオ形式のものを建築と子供たちは利用しています。子供たちが中心で、教える側は、先生というよりファシリテーターとして、子供たちの行動をサポートしてあげるということが多いです。


●親としてのアプローチ

 ここからは、2019年の大阪のワークショップのときの質問内容も取り込んでいます。親として何ができるのかという質問がありましたが、どうやって子供が遊べる環境づくりができるかを考えてほしいと思います。それから遊びの楽しさですね。子供は勝手に好きなようにできます。それをなるべく触らずさせてあげる、失敗させてあげる、失敗を恐れない、失敗したらそこからどうやって戻せるのか、先に進むかを教えてあげないといけない。そして自分たちで行動し、判断してもらって、それがよかったのかどうか考えてほしい。そのためには、子供の話を聞いてあげたり、子供なりの理屈を聞いてあげたり、そういうことがとても大切です。そして、子供の違う面、成績表の5科目で見えないものを見て、それを少しずつサポートしてあげる、例えば考え深さとか、共感力とかを見てあげる、そういうところに面白みがあると思うのです。

アルバカーキのサマーキャンプで

●子供と環境:デザインプロセスと思考
子供というのは、私たちが思う複雑な環境は見えていないと思うのです。私たちは、空間とか環境といった漠然としたコンセプトを、生まれてすぐ把握できるわけではありません。以前、幼稚園のプロジェクトで、4−5歳の子供たちにカメラを渡して、私はその後ろからついていきました。ブロックの間を行ったりして、大人みたいに真っすぐ歩かないのです。
そこで気づいたのは、子供はモノとか人を中心に見ているということです。先ほど話したネガティブスペースは見えていないのです。自然環境とか文化的環境とか、そういう複雑なものになると、すぐ学べるというわけではないのですね。ですから、敷地の分析をする、観察する、データを分析する、研究する、アイデアを出してまとめる、問題解決をするというデザインを通して、モノから内部の空間について、または文化的なものを学んでいくわけです。そうしたデザインプロセスを学ぶことによって思考力も養われます。デザインの力というのは、考える力でもあるのです。このようにして複雑な環境というものを子供たちは理解できるようになると思います。
デザインプロセスを学んで思考力を養う


●建築と子供たち体験による子供たちの変化のエピソード
ニューメキシコ州立大学付属幼稚園で、4~5歳の子供たちに紙の構造を学ぶというプロジェクトを行いました。4~5歳に建築を教えるのはとても難しいことです。最初の1年はかなり苦労して、はじめの30分は名前を書くだけで終わったこともありました。ある男の子の作品は、筒になっている上の棒が伸びたり下げたりできるのです。難しそうだったので、手伝おうか?っていったらダメって言われて、絶対触らせてくれませんでした。でもその日、家に帰ると、仕組みを親に話しだしたらしくて、次の日、お母さんが、何があったのかとびっくりしてやってきました。建築と子供たちでよく驚かれるのが、子供たちが自分の作品について、いかによく話せるかです。よく「うちの子、こんなにしゃべるとは知らなかった」という方が結構います。

●教育とのかかわり:体験と教育
建築と子供たちは、教育につないでいけば深みを出すことができます。例えば、橋を作ったとき、橋が壊れるまでテストをして、単に面白かったという体験だけで終わらせることもできるし、そこから一緒に絵を描いて、どこが弱かったのか、どのように壊れたのか、どのくらいの重さに耐えたのかなど分析できるように指示した場合では子供たちの学びの内容はかなりかわってきます。
どこまで、何を学ばせるかを、私たち教える側がしっかり考える必要があります。
橋を壊すテストをしたあとに、どこが弱かったのかなど分析させると学びの内容が深くなる

●ワークショップの心がけ、工夫、ポリシー
ワークショップの心がけとしては、何をしようとしているのか、何が一番大切なのか、何を学んで体験して考えて制作してほしいのか、ということを子供たちに伝える必要があるということと、教師としてより、ファシリテーターとして行動することです。そうするためには、子供もファシリテーターもお互い考えていること、意図を伝えなければなりません。それは面白いことでもあり、難しいところでもあります。子供に行動させる、決断してもらう、責任をとってもらう、それをあとで判断してもらう、それがとても大切なことだと思います。
そして自分だけで解決できないところはみんなで協力してチームワークを通して考えてもらいます。

工夫やポリシーとしては、
  • アン先生は、鉛筆を使わせません。子供は失敗を恐れて、消す方に力をいれてしまうので鉛筆を渡さず、マーカーを使わせます。そうすることで自分の考えの記録、学んだ記録を残すことができます。
  • トレーシングペーパーを利用してアイデアを重ねることを学びます。
  • 言い方を良く考えないといけません。例えば、橋のデザインだったら、「橋をデザインしてね」と伝えると、ゴールデンゲートブリッジとか今まである橋を利用しようかなと考えてしまう。例えば「AとBを渡すものを考えてね」と言うだけでも子供の出来具合がかなり違ってきます。
  • 絵が難しいという子供もたくさんいます。ところが模型を作り出すと模型のほうがやりやすい。模型ができたら絵に戻すとかいろいろなやり方があります。今まで子供が表現できなかったことを、3次元をうまく利用することで表現ができるようになります。
  • 色はとても大切です。特に小さい子供にとって色があったほうが良いときと、悪いときがあります。色があると色だけに執着してしまうこともあるし、色がないほうがわかりやすいときもあります。

●ネイティブアメリカンの建築と子供たちプロジェクト
コチティプエブロ「ネイティブ語サマースクール」
建築と子供たちには、基本版があるのですが、プロジェクトによって違うものができます。環境について教えたり、デザインを教えたり、またはデザインプロセスの一部であることもあります。例えば、ニューメキシコには、ネイティブアメリカンが結構いますので、その人たちと一緒にワークショップをやる機会がありました。
サンタフェとアルバカーキの間にコチティプエブロがあります。このプエブロでは、プラザを囲んで住んでいたのですが、ある時期、アメリカ政府が新しい家を建てるというサポートをしたため、みんな外に出て行ってしまったのです。そして、みんなが集まるための伝統的なプラザが段々利用されなくなり、修理もされなくなってひどい状態になっていきました。ニューメキシコ州立大学の建築家や都市・地域計画家たちが手伝って、それを直すにはどうしたらいいかを地域の皆さんと考えていったのですが、そのなかで未来の子供が何をしたいのかという話になって、建築と子供たちの私たちが呼ばれたのです。
アドビ建築のコチティ教会

このワークショップは、言語を教えるのに使ってほしいということでした。
2週間のプロジェクトでしたが、最初の週は、ネイティブ語のサマースクール用のプログラムを先生と一緒に作ってほしいということでした。ところが、実際にネイティブ語について先生方によく聞いてみると直訳がないのです。英語をそのまま利用していたり、家の部位を表す言葉はスペイン語でした。しかも、ネイティブ語は聖なる言葉なのでだれも書いてはいけないというのです。そういう難しい制限がありました。仕方がないので、英語で書いてどんなものに直訳があるのかを皆で話し合いました。例えば丸という直訳はあるけど、四角がなかったのです。じゃあどうやって表現するかとなって、年配の先生が「four corners」と提案しました。そのようにどんどん作っていかなければならないという状態でした。書かないものですから、オーラル・ヒストリー(口述歴史)がよく利用されるのですが、昔の話を年配の先生方から教えてもらい、それを聞きながらダイアグラムに表現して、今と昔の生活の違いについて考えたりしました。コチティプエブロは、芸術的な人たちが多くてとても楽しかったです。
このプロジェクトでは、伝統的な建物の作り方も習いたいということで、子供たちに紙でアドビ建築の模型を作ってもらい、さらに現代の生活とどう合体できるかということをデザインしてもらいました。伝統的なものは茶色の紙で作り、それをいかにモダン化しているかということを考えて、そこは違う色で表現してもらいました。

ズニプエブロ「メインストリート・サマーデザインキャンプ」
ズニプエブロは全然違ったプロジェクトです。このプエブロのメインストリートをもう少し工夫したいということでした。というのは辺ぴなところなので、人がどんどんいなくなってしまったのです。若い人たちがほかに仕事を見つけてプエブロから出て行ってしまうのでプエブロにビジネスを持ってきたい、それにはメインストリートを充実させたいという目的で、子供たちに考えてもらう5日間のサマーキャンプを行いました。
 パターンを使ってファサードをデザインしたり、公園のデザインをしたり、ズニアーティストのための多目的建築デザインモデルというのを子供たちに作ってもらいました。コチティと同じように茶色で伝統的な建物のファサードを作り、内部の壁画とかをモダンにしてほしい、そういう形で作ってもらいました。全部で4つのネイティブアメリカンのプロジェクトがありましたが、このズニとコチティプエブロが一番記憶に残ったプロジェクトです。

●創造力とは?
創造力というと、アイデアが一瞬にしてひらめくというように思われるかもしれませんが、何かを構築する力、想像する力、想像したものをまとめる力、見えないものを形にする力など、次のような様々な能力を駆使しようとする力と考えられます。
  • 行動力:デザイナーでも日々訓練しているし、長年かけて創造力を養っている
  • 何かを構築する力(見えないものと、見えるものの両方を含む)= デザイン力
  • 想像力(ないものを夢みたり、現状で満足せず次を探したり、改善することができる)
  • 収束的および発散的思考(いろいろなアイデアを出し、物ごとの詳細を考慮しながらも、シンプルに全体をまとめることができる)= 量産、スピード感、効率性
  • 観察力(見ることや感じることを大切にし、状況を把握することができる)
  • 形にする力(見えないものを、自分や他人に見えるようにすることができる)
  • 企画力(段取り力と計画性がある)
  • 問題解決力(問題を解決するだけでなく、利用することができる)
  • 柔軟性(曖昧なことやわからないことがあっても物事が進められ、様々な試行錯誤ができる)

●評価
そうした力をどのように評価するかというと、アン先生は、コミュニケーション力、想像力・革新力・創造力、プロセスの理解、細部と全体の美しさ、技術力など5項目の評価基準を挙げていて、それを建築と子供たちのポートフォリオアセスメントと呼んでいます。そこには1から5までの評価の段階があります。

このあと酒井さんから何か質問がありますか、との声掛けがあり、質疑応答を行いました。

●質疑応答(抜粋)
Q: 大人になっていくプロセス、あるいは大人が学び直すプロセスに言語化は大事だと思うが、これまでの経験から何か気が付かれたことがあれば教えてほしい。
A: アメリカは言葉で出来ている社会なので論理的に話せないと話にならない。幼稚園から、話して要求するということをしっかり教えている。オーナーズカレッジでは、私も医大志願者の推薦状を書き、学生も(志願書や奨学金申込書など)ものを書くことによって奨学金が得られたりするが、論理的に書くことができなければそれを得ることができない。日本が国際社会の中で成功したいとか、お互い理解してもらうためには言語化するということを学ばなければならないと思う。   
視覚も言語の一部であり、3次元の模型も言葉であるということを理解してどれをうまく使うかによるだけで、合体することもできるし、模型だけにすることもできる。3次元、2次元、言葉の3つ全てを表現するということが建築の強みであり、そこが教育の部分になると思う。

ミーティング終了後、参加した皆様からアンケートをいただきました。その結果を受けて酒井さんからお手紙を頂戴しましたので以下に紹介いたします。

アンケートから(抜粋)
  • アメリカ、日本国内で、活動している方々をzoomでつないで、話を聴くことができてよかった。
  • 建築と子供たちの理論的バックグラウンドが分かり、とても有意義でした。
  • 酒井さんの講義は私にとってこれからの未来へのワクワク感が高まりました。いろいろなアイデアを駆使しながら私もチャレンジしてみようという気になりました。
  • とてもいい勉強になりました。「建築と子供たち」の教材というかワークショップの内容がデザイン系の勉強にとどまらず、自己表現の練習、社会観察力の育成にもつながる内容であることを改めて理解しました。
  • 参加させていただきありがとうございました。とても勉強になりました。ワークショップ参加者のコメントが本当に参考になりました。
  • 4名の発表者はそれぞれの立場からの観点から実践された内容で、それぞれ特徴があって大変興味を持って拝見しました。
  • 五感を研ぎ澄ませること、立体などの3次元表現、図やスケッチなどの2次元表現、言葉などの1次元表現の意味を発見し、互いにつなぐことが出来ることなど身近な工夫で創造性の世界が開けることが深く確認できました。
  • ワークショップの発表と講評で、次につなげるための意見を聞けてよかったと思います。そして、後半はとても為になる講演でした。今後は、勉強会として、指導者や専門家向けのワークショップとして続けていけるとよいなと感じました。
  • 私は、現在中学生を対象とした模型を使った建築教育の研究を行っています。酒井さんの話を聞いて日々の生活から「観察」、「言語化」、「表現」に関する意識が大切だとよくわかりました。酒井さんは表現と言語化を結び付ける方法として特に工夫されていること何ですか?教えて頂けると助かります。
  • 「言語化する」大事さにとても共感しました。ある方の講演で「語彙力は人生を表す鏡」であると発言されていました。講演内容で写真の説明をされたのですが、平易な言葉で意図することをわかりやすく説明されており、共感が得やすかったことを思い出します。描いたことを動詞化するという分析も、客観的に見返すことができるいい手法だと思いました。貴重なお話、ありがとうございました。
  • アメリカで子供の頃から論理的に説明する訓練が学校教育でなされており、論理的に話せないと良い職が得られないという点が新しい気づきでした。そのため、デザインのプロセスを言語化する訓練がとても重要なのですね。日本とは育てる力の入れどころが違っている点に気づかされました。国語との横断的学習が興味深かったです。
  • オンラインの内容が大変濃い内容になったことがすごくうれしかったです。オンラインワークショップの受講者の方々の多方面からの感想をお聞きし、改めて夏から秋にかけてやれることに挑戦した結果、こんなにいいものになったんだと自覚しました。
  • 貴重な機会に参加させていただきありがとうございました。前回までの三度の受講も大変楽しかったです。
    今回は、建築と子供たちについてや、プログラムのことも知れて、また更に興味がわきました。特に海外(アメリカ)では子どもの頃から【言葉で説明したり、要求を伝える力をトレーニングする】ということに、衝撃を受けました。意見や考えを堂々と話せるのは、気質からくるものだと思っていたので。プログラムを終えた幼児が【話す言葉が増えた】ことにも驚きました。この先、息子や子供たちと触れ合う際には、これらを意識して接したり、遊びの中で取り入れてみたいと思っています。
  • 環境の一部である「自分」と、「社会」をインタラクティブに結び他との関係を構築するために、言語と2Dと3Dを使って表現していく。その術を学んでいく。「一部」の自分はNegative Spaceを含めた他を慮るスチュワードシップを身に着けることが大切。今、大人ばかりでEUの連中と話し合いをする際に、彼らは2Dと言語化が得意なのですが、3D化や非言語化(多言語故の苦労があり、例えばPictgramなどを用いたシンボル化)が苦手で、日本に対しては「我々にはない、独特の感性があって尊敬している」と言ってくれる方も西洋人にはおります。意見交換でもありましたが、大学生どころか、大人にとっても自分の視点を定め視野を広げるデザイン教育としての「建築と子供たち」のプログラムは、世代を超えて有意義なのではないかと、あらためて実感しております。本日はたいへん意義深い貴重な午前の時間を共有させていただき、誠にありがとうございました。
  • ワークショップを体験してからの酒井さんの講義へと繋がる流れは、普段直接あまりワークショップに関係していない私にとっては大変貴重な体験でした。
    酒井さんの講義の中で、ネイティブアメリカンの言葉には「四角」という言葉が無い、概念がなかった、ということに一番驚きました。自然界や生物には、あまり四角いものがないからでしょうか。大きな建物や集落が形成されていくにつれて出てきた概念なのかもしれませんね。
    そういえば、大学時代に聞いたことですが、目の細胞を研究していた生物学科の友人が、ネイティブアメリカンは目のナナメ細胞が発達していると言っていたことを思い出しました。これは、人間の目の細胞は、発達の段階で普通はまず水平を認識するようになり、次に縦の線を認識するようになり、最後にナナメの線を認識できるようになって「奥行き」を獲得するらしいのですが、ネイティブアメリカンは視細胞の出来る順番が少し違うらしく、水平→ナナメ→縦と発達しているらしいということでした。「四角」という言葉が無かったことと併せて、発達上の空間認識が環境によって大きく異なるのだと改めて思いました。同じような事として、日本人の「間」の概念のお話ももう少し詳しく聞いてみたかったです。西洋の文化ではあまり「間」が大事にされないとのお話でしたが、イスラム系の建築では世界最古の大学、アルハンブラ宮殿、塔を四隅に建てることによる聖なる空間を作る手法など、物体そのものよりは、その「あいだ」の「ま」を中心に捉えているのではないかと感じていました。どこでその違いが生まれたのか、文化的な背景を知りたい所です。さらに、酒井さんの言われた日本的な「間」の捉え方が中国経由なのでしょうけれど、そのイスラム系の空間認識の延長にもしあるとすれば、イスタンブールを東洋と西洋の境目にしたことと何か関係が出てくるような気もしましたがいかがでしょう。

酒井敦子さんからのお手紙
10月24日は、お忙しい中お集まりいただき、どうもありがとうございました。新しくご参加いただいた皆さま、はじめまして!懐かしい皆さま、久しくご無沙汰しておりました。2019年以来、コロナで一時帰国もできない状態でしたが、こうして、オンラインでお会いでき、大変嬉しかったです。
そして、ご丁寧にご質問・感想・あたたかいお言葉どうもありがとうございました。いろいろなアイデアや思いがあり、とても参考になりましたし、次は、皆さまの活動内容やアイデアをシェアしていただき、一緒に話し合いたいとも思いました。
ここ2年、付け焼き刃状態ではありましたが、大学でもオンライン教育について学び、体験しました。確かに、対面でしかできないこともたくさんありますが、オンラインの良さも少しわかるようになりました。大阪・仙台チームの皆さまのおかげで、こうして、建築と子供たち関係のオンラインワークショップや交流会の機会が設けられ、お互いの場所に限らない交流も可能になったのは、とても嬉しいことです。
現在は大学の仕事が手一杯で、なかなか建築と子供たち関係の活動まで行き届いていませんが、幼稚園や小中高の子供たちに教えた経験や学びが、医大を目指している学部生を教えるのにも案外通用することもよくあり、どのレベルでも、学びの原点や楽しみというものは、あまりかわらないような気がします。

以下、アンケートでいただいたご質問に関する内容です。

・表現と言語化を結びつける方法について
表現と言語化という行動は、無意識だったものを意識的にし、デザインが意図的なものであることを理解してもらうことです。
私が工夫していることは、プロセスです。同じプロジェクトの中で様々な表現を利用し、そのデザイン過程と思考過程が、参加する子供たちや大人にもいつでも見えるようにしてあげることです。例えば、まだデザインのアイデアが定まっていない時は、ダイアグラムを利用し、皆のアイデアを集めるブレーンストーミングの方法を利用し、文ではなくまずは単語を集めます。
次にデザイン例を参考にしながらスケッチをしたり、コラージュを作ったり、さらに技術的な単語も書いて、イメージと言葉の両方を記録に残します。ある程度アイデアが出てきたら、それをまとめて文にするか、軽く中間発表・批評や話し合いをしてもらいます。
その後実際に平面図やデザインスケッチをし、模型も作ります。模型を先に作った方がわかりやすい時は、できた模型を見てスケッチをしてもらい、プレゼンテーション用の説明文を足していきます。この段階では、プロジェクトやモノに名前や題名をつけて、アイデアをデザインコンセプトに変換し、全ての過程を振り返ってもらいます。
建築家にとってこういった作業は習慣になっているのですが、デザインを経験しことがない人にとってはとても難しいことで、慣れていない人は、まず頭で全部考えてまとまってから見せようとします。でも、それでは考えを共有できませんし、効率が悪いです。つまり大切なのは、プロセスを段階的にし、できる限り多くの次元や表現方法に触れさせることです。そうすることによって、それぞれの子供の強みと弱みが自然と見えてきます。教える側は、子供の段階的な作品を通し、まず子供が何を思って、何をしようとしているか理解し、足りない表現や技術面をサポートすればよいわけです。
さらに他の子供とプロセスを共にすることで、他の子供たちのいろいろな表現方法がよいお手本になりますし、正しい答えや方法があるはずだとこだわっていた子供も、なんだかよくわからないままとりあえずやってみた子供も、全体を見回した時に、共通点もあれば、案外人それぞれだということを理解していきます。
さらに、いくつかプロジェクトができるのであれば、それぞれの学習目的よって、物語をつくってもらったりして想像することを中心にしたり、感覚について学び感情表現と結びつけたり、空間デザインでは機能的なことに注目を向けたり、敷地分析などをシンボルと凡例を利用しコミュニュケーションをとってもらったりと、学びの過程と集中する点に変化をつけることもできます。

・ネイティブアメリカンの言葉に四角がなかったことについて
部族によって違うかもしれません。確かに、自然にできた個体としては、四角はあまり無いかもしれませんね。私の勝手な想像ですが、円は、太陽や切り株などの自然の形があり、モノが朽ちる時は角がとれ、人が輪になって並ぶなど機能的なものとして必要だったのかもしれません。幾何学的な文様はたくさんあるのですが、幾何学という概念がない状態で、外来語をそのまま取り入れたのだと思います。窓という概念も、もとはただの空気穴でしたので、視覚的な窓とは別物で、石・土の文化と木の文化の違いも関わってくるのかもしれません。
目のナナメ細胞の情報どうもありがとうございました、面白いですね。ネイティブアメリカンのツボに描かれたたくさんの斜めの線と、奥行きと聞いた瞬間壮大なスケールのニューメキシコの砂漠を思い出しました。脳科学と教育について講演があり、幼児がアルファベットを学ぶ際に斜めの線の認識が必要だと聞いた記憶があります。
「間」の話も確かに様々な見方ができ、西洋といっても場所によって違うかもしれませんし、イスラム系の空間認識のアイデアも興味深いですね!まだ山ほどわからないことだらけですが、また近いうちに皆さんと交流・会話ができるのを楽しみにしております。

では、皆様お元気で!
酒井敦子

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7月25日からスタートしたオンラインプロジェクトは、3か月の長丁場を乗り越えて、無事終えることができました。これも酒井さんはじめご参加いただいた皆様のおかげです。
酒井さんの、建築と子供たちの理論、意義、体験談、アドバイスなどの貴重なお話や、ご参加の皆様からの示唆に富むご意見とご感想を、今後の活動に生かしていきたいと思っています。
ありがとうございました。 

建築と子供たちオンラインプロジェクト スタッフ一同

ARCHITECTURE AND CHILDREN ONLINE MEETING 2021 ~オンラインでつなぐ建築と子供たち~② 講演 part1

ARCHITECTURE AND CHILDREN ONLINE MEETING 2021
~オンラインでつなぐ建築と子供たち~

2021年10月24日(日) am9:30~11:00 

< 講演「建築と子供たち~創造性を育む教育法について考える~」part1>

酒井敦子さんに、オンラインワークショップのまとめや、2019年に大阪で行われた「はじめての建築と子供たち」の内容も含めて、「建築と子供たち~創造性を育む教育法について考える~」というテーマでお話していただきました。


●これまでのオンライン交流

2000年に、仙台とニューメキシコの子供たちの国際交流の一環としてビデオ会議を行いました。芦口小とモンテズマ小の5年生はお互いにエコハウスをデザインしてきたのですが、その内容を図や模型を見せ合って発表しました。まだスカイプもないころだったので、大学のメディアセンターに行ってつなぎました。

そしてスカイプが導入されるようになって、建築と子供たちの仲間のカタリーナさんが、出身国ボリビアの建築家とアルバーカーキアカデミーのサマースクールの子供たちを結んでスカイプ交流を行いました。

2017年から2019年にかけては、南フロリダ大学のオーナーズカレッジの学生と、仙台の六郷小、立町小、台原小の子供たちがスカイプで交流しています。

オーナーズカレッジというのは、入学してくるトップクラスの学生を様々な学部から集めて学際的な教育を斡旋しているところで、1/3ぐらいは医療系を目指している学生で、その次にエンジニア系の学生が多いので、建築と子供たち自体の内容は行いにくかったのですが、学生の良いところを活かして、また違った交流ができました。

例えば、キャンプについて話すためにテントを持ってきたり、象の歯磨き粉という化学実験をテレビの前で見せたりして、それはそれで面白かったと思います。

そういうわけで、私たちは案外オンライン交流の先駆者でありまして、いろいろなことを長年してきました。


建築と子供たちの哲学:教育学

建築と子供たちはニューメキシコで生まれました。

建築と子供たちゆかりの地ニューメキシコ
アドビ建築やバルーンフェスティバルで知られる

この教育法は、アン・テイラー先生のアリゾナ州立大学での博士課程のころに始まりました。このプログラムは、60年代~70年代の公害や環境問題に目を向けた環境運動にかなり影響を受けています。ですから皆さんは、建築と子供たちで学んできたことが自然とつながっていると感じたと思います。環境というものは、私たちの生活の一部であり、物事の原理や法則を学ぶのに適している、学校では学科をばらばらに学ぶのではなく、まとめて学ぶ方が効率もいいし、学際的なカリキュラムができるのではないか、というところにアン先生は目を向けたのです。
そして、アン先生の専門分野である芸術教育学関係や、ハワード・ガードナーの8つの知能※1、ベンジャミン・ブルームの学びの分類学※2など様々な教育学も取り入れ、スタジオを中心とした創造的な学習環境の必要性も説いています。
現在よく聞くSTEAMをさらに超えた総合的な学習というのをアン先生は探していたと思います。
アン先生はよく、BODY、MIND、SPIRITと言っていますが、それは3つの学習要素のことです。五感などの物理的、感覚的、生理的なものをBODY、論理的な思考や概念的な学びをMIND、文化的な価値観や精神面をSPIRITと表現しました。
環境自体が学びの文脈であることを利用して、環境を使いながら学習内容・学科を学ぶことができる、そしてぐるぐる回りながら3つの要素を鍛えることができるという学びの過程を大切にしています。

※1:人間は、言語的知能、論理数学的知能、空間的知能、身体運動的知能、音楽的知能、対人的知能、内省的知能、博物的知能の8つの知能を持つという多重知能論
※2:観察と感覚的な発見、コンセプト形成とスキル習得、創造的問題解決、価値評価、スチュワードシップを繰り返し、学習者は物理的環境での発見を観念/思想に変換していく学びの過程をシステム化したもの

● 歴史的背景と流れ
建築と子供たちは、80年代にはプログラムとして成立し、85年にスクールゾーンインスティテュートが設立され、87年にカリキュラムポスターができ、91年には教師用のガイドブックもできました。同じ頃、ドリーン・ネルソン先生のCity Building Educationなど他のプログラムもできて、2000年ごろには、ウェブやネットワークの普及でアメリカ各地のプログラムや世界の様子もわかるようになってきました。
そして、2019年に、アン先生がアメリカ建築家協会で、AIA Collaborative Achievement賞を授賞され、それをお祝いした矢先、コロナがやってきて、建築と子供たちのプログラムを体験できるオンラインビデオができました。

●プログラムの基本構成
実際のプログラムの内容は表1のようなものがあります。基本的な視覚言語とコミュニケーションからはじまって、パターンになり、少しずつ複雑になっていくというのが基本型です。また、それぞれのプロジェクトが違ったり、目的が違ったり、教える人によって発展していって複雑なものもたくさん出てきます。オンラインビデオは基本型のものがメインに入っています。皆さんのオンラインワークショップは基本型のはじめの方のものですね

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 基本型
  ・視覚言語とコミュニケーション 
  ・デザインを整理する原理と自然のパターン
  ・断面図の基礎、スケールと抽象画
  ・建築の決まり(平面図、立面図、断面図)
  ・建築模型作り ・構造デザイン
 応用型
  ・サスティナブル ・複雑な構造 
  ・文化的内容(歴史的建築保存など)
  ・インテリアデザイン ・都市デザイン
  など、もう少し複雑な内容を入れ込む
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    表1 プログラムの基本構成

例えば、禅タングル、それ自体は建築と子供たちにはありませんが、線描画を使って技術を身につけ、視覚でコミュニケーションを図る可能性を学びます。線にはいろいろなものがあり、それによって深さも違うし、奥行きも出てくる。さらに、表面を処理すると3次元ができます。そういうことを少しずつ学んでいかなければならない。言葉も大切ですが、視覚的コミュニケーションも大切です。

線描画「禅タングル」で、線や面の技術を身につけ、視覚的コミュニケーションを学ぶ


●空間の構成について       
その次に空間の構成について学びます。ポジティブフォームとネガティブスペースという2つの空間の要素に気づくことの大切さも学びます。ポジティブフォームとネガティブスペースというのは案外難しいのです。
建築というのはモノとして見ると、壁とか触れるものをいろいろ組み合わせてつくられています。でも体験しようとすると、空間としての建築体験というのが大切で、そこを考えないと建築デザインというのはできません。
日本では、「間」というコンセプトがあるので、わかりやすいと思うのですが、西洋では、「間」という考え方があまりなくて、芸術学やアートに入っているから学ぶわけで、それをポジティブフォームとネガティブスペースとして学んでいます。
9-11メモリアル※3や光の教会※4は、ネガの部分をうまく利用した良い例ですね。
なぜこれを学ばないといけないかというと、私たちの脳の仕組みにも、哲学のゲシュタルト論5にも関係しています。 
有名なウサギとカモの絵は、目と脳の関係で、ウサギに見えることもあるし、カモに見えることもあります。ウサギとカモは交互には見えやすいですが、両方一緒となると難しいのです。建築でもポジとネガを平等に見るという事は難しい。だから頭のトレーニング、デザインのトレーニングをするのです。
2017年、六郷小学校では、道をデザインしたとき、ゲシュタルト論5を利用して、道自体を強調したものと道の周りを強調したものとを、5年生に交互にデザインしてもらい、それらを一緒に並べて、ポジとネガのコンセプトを学んでもらいました。

六郷小学校「道のデザイン」
道を強調したグループ、道の周り強調したグループに分かれてデザインし、ポジネガのコンセプトを学びました


※3:世界貿易センター跡地に犠牲者を追悼する施設として作られた。センターが建っていた場所に、地下深く切り込まれた空間は、空や周囲と一体になってネガティブスペースを構成している。

※4:安藤忠雄設計の教会。ポジティブな物体でデザインされるのが一般的な十字架を、壁に十字に穴を開けて、そのネガティブスペースから差し込む光を十字架として見えるようにデザインされている。
註5:ゲシュタルト論は、人間の脳は特徴を捉え見たいものを見るようにできているという理論。また、触れる物をポジティブ、物と物の間の空間をネガティブとしている。


●立体化:2次元から3次元へ
アン先生は、デザインパターンというものが、自然のパターンを利用したデザインで、物事を整理する、頭を整理するための方法「Organizing Principle(構成的原理)」であると言っています。この原理、デザインパターンを学びながら、紙を利用して、モノの立体化の面白さも少しずつ体験していきます。
さらに、それを応用して、街並みやファサードのデザインに利用することもできます。


●創造性を育む:想像する、創るという行動とは?
想像する、創るという行動とはどんなことだろうということを、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。私たちは、こういったことを深く考えずに無意識に行動しています。
それを言語化したのが、彫刻家のリチャード・セラです。彼は、自分がやっている彫刻という行動についていろいろ考えてそれを言葉にしてみました。それが動詞のリストです。
ここで、皆さんも参加できるよう、画面の内容を変えます。今回は、グーグルジャムボードを利用します。可能でしたら参加ください。うまく開けなければ、見るだけで、声をかけてくださっても良いです。
ジャムボードは、大学のオンライン授業で学生が参加できるようによく利用しています。ここでは、セラの動詞リストを使ってポジネガでどんな行動をしているかを、皆さんにチェックしてほしいと思います。
ワークショップに参加した方は、自分がどんな行動をしたか、参加していない方は自分だったらどんな行動をするかを考えながらリストにチェックマークをつけていってください。
こうすることによって、自分の行動とか子供たちの行動をしっかり見極めることができます。そしてそれをいかに言葉にしていくかということがとても大切なことです。特にアメリカの場合は、論理的に話せるとか、例えば建築の授業とかで、どうしてこんな形なのかとか、どうしてここにこんなスペースがあるのか聞かれますし、あとは仕事をもらってくるときに、うまく話せない人はたくさん仕事がとれないのです。ですから、子供たちも体験したことを言葉にできるというのがとても大切です。幼稚園でもいろいろな言葉を教えたりします。例えば、何枚紙を切ってください、というときに何枚としっかり数を言う、その数に合うように教える、そういうことを心がけています。
視覚言語も大切ですが、それを言葉に戻すという思考能力の訓練もとても大切です。
動詞リストは、そういう面で面白いと思い、建築と子供たちとは直接関係ないのですが、ここで取り上げました。

ジャムボードを使って、ポジネガの作品を作るとき、どのような行動をしたのか、動詞リストから選んでもらいました。「広げる」「切る」「回転させる」「折りたたむ」「接合する」「集める」「調整する」「異なるようにする」「とりこむ」「乱す・崩す」など、チェックマークが次々につけられていきました


ARCHITECTURE AND CHILDREN ONLINE MEETING 2021~オンラインでつなぐ建築と子供たち~① 発表

 ARCHITECTURE AND CHILDREN ONLINE MEETING 2021
~オンラインでつなぐ建築と子供たち~

2021年10月24日(日) am9:30~11:00 

7月より開催してきたオンラインワークショップを振り返り、参加者からワークショップの感想や今後への提言などを発表していただくとともに、建築と子供たちに長年携わってこられた酒井敦子さん(南フロリダ大学ジュディゲンシャフト オーナーズカレッジ専任インストラクター)をお迎えして、米国フロリダから講演していただきました。参加者は、仙台、大阪、名古屋、新潟、宇都宮、シンガポールからの大人23名と小学2年生1名です。

< 発表「ワークショップを振り返って」>
参加された4名の方々から発表をいただきました。
●親子参加者:小学2年生の息子と一緒に3回受講しました。息子は絵を描いたり、切っ
たり貼ったりするのが少し難しいところがあり、子どもにどうしたいのか聞いて手伝った作品が多いです。今回、切る、並べる、貼るという単純な作業だったので楽しんで取り組んでいました。夢中で取り組んでいて最後に仕上がるので子どもの満足度が高かったと思います。受講してから生活の中でもデザインパターンを見つけては教えてくれたりしています。今までおもしろい形だな、可愛い形だなと思っていても、私にうまく説明できないでいましたが、「ここがぐるぐるになっていておもしろいね」とか「同じ形がつながっていて楽しいね」とか具体的に表現できるようになりつつあり、彼にとってプラスになったと思います。
受講してみて、子どもを対象にする場合、子どもの年齢や発達状況に応じて手伝いや声掛けが必要だと感じました。Zoomだと途中で質問するのが難しく、親が手を出しすぎて子どもに自主的にさせることが難しかったので今後工夫が必要だと思いました。
パターン 放射

禅タングル 対称・分岐、リズムと繰り返し


●建築家:いかに自分の頭が硬くなっているかを実感させられました。
一番悩んだのは、あるルールが与えられて、その中だけで考えていたのでは余り面白くないものになるのだろうなと。だからルールをどこまで逸脱していいのかという解釈を探っていくのが難しく、そこに時間をとられて頭を自由に考えられなかったです。
ポジネガでは、〇△□を残しながらどう分解していくのか考えて、少しは元の形を残そうとしたことが大人のブレーキになりました。子どもさんの作品を見ると、爆発的に出ていったり、1か所外すだけでものすごく面白くなるとか、すごいなと思いました。デザインパターンでは、分岐、螺旋、放射をいっぺんに使えないかなどと考えて、結局何だかわからなくなってしまいました。禅タングルでは、出張先の素敵なアイビーの中庭で受講して、アイビーの葉を使ってそのままパターンにしようとしたらただのアイビーの壁面になってしまい、自然にはかなわないなと思いました。
今回のワークショップ、お子さんだけではなく、大学1年生にやってもらうと空間認識や空間の創り方の参考になると思うし、頭の硬くなった大人に脳を柔らかくしよう講座みたいにするといいのではないかなと思いました。
ポジネガ 四角

パターン 分岐

●小学校長:デザインパターンと禅タングルの回に参加しました。パターンというと、パターン化するみたいな感じで何となく画一的になってしまうのではないかなと思っていましたが、実際やってみるとそれぞれの個性が際立つみたいな結果になってすごく面白いなと思いました。そんななかで自分の個性は硬いなと思いました。
学校でやっている図工と比べてみると、例えば絵を描く場合、写実的に描けたら「上手だね」のような評価になっていて、それが子供たちの発想をせばめているような気がしました。今回のような活動は、パターンに気づかせて、自然にあるものに注意深く目を向けることを促していくので、それが子供たちの面白い発想を引き出していくのではないかなと思いました。親子の方の様子を見ていると特にそう感じました。
今、STEAM教育が大事だと言われはじめて、そういうところに向かっていくと思のですが、今のところ、STEAMのT(テクノロジー)がイコールプログラミングみたいな感じになっていてそこへの注目が集まっていますが、建築デザイン教育がもっと注目を集めてもいいと改めて思いました。
パターン 放射

禅タングル 分岐


●ワークショップ指導者:この度、デザイン体験ビデオの翻訳に携わることになり、アン 
先生のプログラムを何度も何度も聴いて書いて読んでという作業をさせていただいたおかげで、建築と子供たちのプログラムの目的やSTEAM教育がどういうものかということを勉強させていただきました。そのなかで建築と子供たちは、単純なデザイン学習ではなく、総合的かつ体系的に考えられているプログラムであり、今後もうまく活用させていただきたいなと思いました。
今回、学習の目的は私自身よく理解して、大学で学んだことや実務で日々体験していることと重ね合わせて指導にあたったわけですが、わかっていることと教えることは全く別の世界で、いろいろ試行錯誤しながらやらせていただきました。学校の先生たちは大変だな、すごいなということを実感したところです。
zoomの学習での感想ですが、良い点は情報を即座みんなで共有できることは便利だし、やりやすいなと思いました。また、パワポを使って説明したり、カメラを目の前に持っていけば、みんなに拡大して見せられるとか、画面に映るところに必要なものだけおいておけるとか、発表者が一人ひとり大きくできるといったことも良い点として挙げられると思います。
今回のデザインパターンの体験では、自然物を見つける、そしてデザインするという2段階の学習でした。リアルであればみんなで自然物を見つけに行くというところにも体験の醍醐味があると思うのですが、個人個人のオンライン学習では、みんなでとか外に出てとかいうところに制限がかかってしまうので、リアルにはかなわないなと思いました。それと参加者の作業状況が見えづらくやりにくかったのですが、今回は主に建築関係の大人と親子参加者というレベルが高い人たちだったこともあり、そうした状況でもかなりよく対応できたと思います。今後子どもを対象にする場合、作業進捗を確認できるアプリを導入する、リアル体験を一部取り入れてハイブリッド型にする、親子参加であれば親と子の両方に対応できるプログラムの仕組みを考える、学校であれば担任の先生の力を借りてリアルとオンラインのいい面を使いながら活動する、などの方法があるのかなと感じ、この先次につなげていきたいと思いました。
パターン らせん

禅タングル 分岐