2018年6月16日土曜日

立町小学校ワークショップ「Imagining Adventure Land: 冒険広場を想像しよう」+ワークショップ「堤人形七夕土鈴に絵付けしよう」

517日(木)
<立町小学校ワークショップ「Imagining Adventure Land: 冒険広場を想像しよう」>

立町小学校5年生31名は、4月から西公園遊びひろばをデザインしよう」という総合学習に取り組んでいます。
今回の交流学習では、6月から本格的なデザイン学習をはじめるにあたって、USFオーナーズカレッジの大学生20名と、同カレッジ講師の酒井敦子さんの指導のもとデザインの練習に挑戦しました。会場の視聴覚室には、子どもたち、USF大学生、USF講師の酒井さんとベンジャミン・ヤングさんのほか、通訳のボアー・ネイトさん、山形大学の3年生・留学生7名、仙台市公園課の職員2名、ネットワーク仙台とJIA宮城地域会のメンバー6名などが集まりました。はじめは立町小の子どもたちから。土井晩翠や伊達政宗のことや、学習発表会、運動会、山登り、クラブ活動などの学校生活について、通訳のネイトさんに助けてもらいながら発表し、最後は「Let’s take a chance」を合唱して締めくくりました。

■世界のいろいろな遊び場を知る
USFの大学生たちは世界の様々な遊び場について調べそれをパワーポイントにまとめて紹介していきました。
最初は、南フロリダ大学の紹介。
いくつもの街区にまたがる広大な敷地はまるで一つの都市のよう。ヤシの木など南国の緑や花に囲まれ、池や湖などの水辺もあり、自然豊かなこのキャンパスの中には、寝そべることができるベンチ、ブランコになっているベンチ、ハンモックなどがあり、学生たちの憩いの場になっているそうです。これを見た子どもたちから「移民になりたい」という声があがりました。
そのほか、ニューヨークの建築家トム・オッタ―ネスがデザインした、人が寝そべって手を差しのべている形のすべり台や、オーストリアにある垂直ネットなどで遊べる多層式のプレイタワー、どこにでも持ち運びができる折りたたみ式のウッドブロックなど、世界中のいろいろな遊具が紹介されました。遊具だけではなく、ストリートスタイルとボールスタイルの二種類があるスケートボードの遊び場や、簡単なループ状のものから複雑な形状のラビリンスまで様々ある迷路まで。また、転がったり、すべったり、障害物競争をしたりと多様な遊びができる連続した小さい丘や、スペインの建築家がデザインしたお洒落な休憩所、釣りやカヌー・カヤック遊びができる川など、遊び場のヒントが次々に出てきました。
広大な南フロリダ大学キャンパス
迷路のいろいろ

■視覚言語の練習
酒井さんの指導で、いくつかデザインの基礎を学んでいくことになりました。はじめは視覚言語の練習。視覚言語とは、視覚的に物事を考え、それを図に表現してアイデアを人に伝えていく建築デザインの手法ですが、図は言葉の代わりに使われるので視覚言語と呼ばれています。
それが実際どういうものなのか、シャボン玉と風船の動きを図に表現することによって体験します。最初はシャボン玉が生まれてから弾けてなくなるまでの一生を描きます。学生たちが吹くシャボン玉のゆっくりとした動きをよく見てシャボン玉が生まれ丸い形になって、最後はポンと弾けてなくなるまでの様子を描いていきました。こうした図によって時間の流れがわかるということでした。次は、3つの風船を同時に飛ばして、その一瞬の動きを描いていく課題です。ここで酒井さんから、「描く道具は黒マーカーだけ。3つの風船の色の違いは、風船の表面の処理を変えることで表現できます。風船の動きは、線を使って描きますが、線は、細い線、太い線、破線、一点鎖線などいろいろな線の描き方があるので、それらを使って風船の動きを描いてね。風船の中の空気の量でスピードが違うことも線を変えることで表現できますよ。矢印を使えば動く方向がわかります。」というアドバイスがありました。風船飛ばしは2回だけなので子どもたちは集中して観察し、それを図に表していきました。
シャボン玉の動きを描こう
シャボン玉が生まれてからはじけるまでの図
「いろいろな線と矢印をつかって書いてね」と酒井さん
「3つの風船を飛ばすからよく見てね」
風船の色のちがいを異なる線で表現

■点から空間へ、ポジティブとネガティブ、光と陰と影
酒井さんから、空間とは何かということについて以下のように説明がありました。
①空間のはじまりは点であり、点をのばしていくと線になり、線で囲んでいくと面になり、面を立ち上げると形(立体)になり、形を組み合わせていくと空間になる。
②空間は、ポジティブ(物体)とネガティブ(物体と物体の間の何もないスペース)でできていて、私たちはネガティブなスペースで暮らしている。
③空間に光が当たると、光が当たっている部分、光が当たらない陰の部分、光が当たって物体の影ができている部分ができる。
④安藤忠雄は、ある教会の設計において、ポジティブな物体でデザインするのが一般的な十字架を、壁に十字に穴を開けてネガティブなスペースをつくり、そこから差し込む光が十字架に見えるようにデザインした。ここでは、ポジティブ(壁)とネガティブ(十字形の穴)、光と陰(壁)を組み合わせて斬新な空間を生み出している。
このあと、ポジティブとネガティブ、光と陰と影を組み合わせて不思議な空間をつくった模型の実例がいくつか紹介されたところで、いよいよ冒険広場のスタディ模型づくりにチャレンジです。
はじめに作り方として、「いろいろな形の穴が開いたカラー台紙(22㎝×22㎝)の上に、白画用紙と細長くカットされたカラー紙を折ったり切ったり丸めたりして模型をつくること。模型は紙で埋めようとせず、真ん中に握りこぶしくらいのネガティブスペースを作ることを意識すること」との注意がありました。
ここからは、子どもたち、USF大学生、山形大学生合わせて58名が6グループに分かれ、視聴覚室隣の会議室と多目的室に移動して模型づくりに励みました。
完成した子どもたちの作品には、「スケボーのコース」「アスレティックのロープウェイ」「日陰になる屋根」など冒険広場にほしいものが表現されていました。その後、再び視聴覚室に集まり、お互いの作品を見せあいながら発表しました。発表の最後に穴のあいた台紙の下からスポットライトを当てて鑑賞。天井に模型の影が映ると歓声があがりました。この日は時間切れになったため、後日学校で全作品に光を当てる活動をしたところ、「光を当てたときと当てないときでずいぶん模型の印象が違う」など、光がもたらす不思議な造形に見とれていたそうです。
光と陰と影のリズムを楽しもう
不思議な冒険広場をイメージして
いろいろな模型ができたよ

スタディ模型づくりのあとはお待ちかねの給食です。立町小学校では1年から6年まで全学年の子どもたちと一緒に各クラスに分かれて給食を摂ることになりました。2年生のクラスでは、大学生に興味津々で「Nice to meet you!」と握手を求めに来たり、自分のノートを持ってきてサインをせがんだりしていました。そんな楽しいひとときも時間が来てしまい、せかされるように帰りのバスへと向かう学生たちに、子どもたちは窓から身を乗り出すようにして「さようなら!」といつまでも叫んでいました。

<ワークショップ「堤人形七夕土鈴に絵付けしよう」>
立町小を離れたUSF一行は、仙台城跡で市内を一望したあと、堤町まちかど博物館へ。博物館では、震災で被災した登り窯が、アン・テーラー博士や酒井さんはじめアメリカの建築と子供たち関係者の方々の寄付など大勢の人たちの協力で復活した話に聞き入っていました。博物館2階の人形展示室とおひなっこやの店内にわかれ、佐藤吉夫師匠の手ほどきで堤人形の七夕土鈴に絵付けをしました。白く胡粉が塗られた土鈴には竹と3つの吹き流しが浮かんで見えます。そこに、竹は緑、吹き流しは青と朱と黄の3色を基調にところどころ白で模様も付けるなどして絵付けしていきました。なかには朱と白を混ぜてピンクをつくり、七夕飾りの脇に桜の木を描いたりして独自の作品をつくる学生もいました。
出来あがった土鈴に名前を入れて終了。みなさん、良いおみやげになったようです。
登り窯の復活にアメリカ人も協力したことを知る
仙台の伝統工芸堤人形の絵付けを体験する

518日、USFオーナーズカレッジ一行は次の訪問地京都に向けて旅立っていきました。
 仙台の子どもたちのために、世界の遊び場や公園を調べ、教材(六郷小のマシュマロやスパゲッティ、立町小のスタディ模型の台紙など)を準備し、日本語を覚えて授業に臨んでいただいたみなさん、本当にありがとうございました。
そして、授業の企画から指導までこの交流の実現にご尽力いただいた酒井敦子さんとベンジャミン・ヤングさん、心より感謝申し上げます。仙台の子どもたちはみなさんと過ごした楽しい時間をいつまでも忘れることはないでしょう。
仙台の旅を終えて


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