2019年7月12日金曜日

■ 授賞記念講演会と昼食会/68日(土)
 午前10時半から、ウエストゲート ラスベガスリゾート&カジノを会場に、クレッグ・ブレント氏(AIA全米デザイン委員会表彰部会副部会長)による司会のもと、2019 Collaborative Achievement Award授賞者の方々によるプレゼンテーションが行われました。
この賞は、建築家が外部の専門家等と協働して、市民の生活空間をよりよいものにした功績を表彰する制度で、授賞者は以下の3名の方々です。

1.アン・テーラー博士:AIA名誉会員、建築と子供たち創始者、ニューメキシコ大学名誉教授、スクールゾーン インスティチュート主宰
2.ヤン・ゲール氏:AIA名誉フェロー、前デンマーク王立芸術アカデミー都市計画学教授、建築家/アーバンデザインコンサルタント、ゲールアーキテクツ共同設立者/現シニアアドバイザー
3.マイケル・ソーキン氏:建築評論家、ニューヨークシティカレッジ大学アーバンデザイン大学院ディレクター、マイケルソーキンスタジオ設立者、NPOテレフォーム(アーバンデザイン研究)主宰

 ヤン・ゲール氏は、1962年にコペンハーゲンにおいて、駐車場と化した道を歩行者と自転車のための空間に改善するプロジェクトを開始。以来、コペンハーゲンの街は車から人を優先する都市空間へと変貌を遂げているそうです。その後、ロンドン、ニューヨークなどの世界各都市で、同様のプロジェクトに数多く携わってきた事例を紹介しながら、建築家は、人間のための公共空間をデザインすることを大切にしてほしいと講演されました。
マイケル・ソーキン氏は、「建築の最終的な利益を受けるべき相手は公共であり、それに必要な協働、社会活動が必要であるのに、その目的を忘れ、建築のための建築デザインになってしまっている。その結果、デザインの調停が必要になるというような状況が生まれている。そのようななかで、私たち建築家はどのように外部の人たちとコラボするべきなのか?」と会場参加者に問いかけながら、建築を通したコラボレーションの本当の意味とは何かについて講演されました。

テーラー先生は、建築と子供たちという、学習環境と教育法に関する研究のきっかけについて、「浜辺を子供たちと一緒に歩いていたとき、子供たちは貝殻を拾って大切そうにしまい込む一方で、いくつかの貝殻を捨てていることを目にしたことで、『子供たちは、環境に対して美的判断をする力を自然に備えている』ということを学んだ」ことを紹介しながら、以下のように建築と子供たちの哲学や目的と、建築家の役割について講演されました。

1.環境から離れるのではなく、環境の一部としての人間であることを理解し、子供たちにもそのことを教えなければならない。
2.「子供の頭の中はコンパートメントのように分かれているわけではなく、全体的に動く」という児童心理学者ピアジェの言葉のように、国語や社会や数学や理科など教科ごとに別々に教えるのではなく、横断的に総合的に教えなければならない。建築と子供たちはそのためのツールである。
3.ランドスケープなどの環境は総合的な学習に役立つ。建築家は、そうした環境を学習の
ツールとして子供たちが学ぶことができるように自分たちのデザイン知識を使うべきである。

4.地域の文化は、学校建築や 総合的学習のカリキュラム開発のための基本となる。
5.建築家は、建築家が使う道具、ライトテーブルなどの備品、展示スペースがあるなど建築設計のスタジオのように教室や学習環境をデザインすることが大切。
6.建築家には、建築を使った学習法を学ぶための教師向けの研修を行う役割を担ってほしい。

最後に、アメリカとメキシコとの国境について、壁を造るのではなく、2か国の人と文化の交流センターを造ることを提案して締めくくりました。


建築と子供たちについて講演するテーラー先生
先生の右側に、ゲール氏、ソーキン氏、司会のブレンド氏が並ぶ
子供たちは浜辺で貝殻を拾い集めながら、美的判断を下している
「総合的な学習モデル」
・環境から離れるのではなく、環境の一部になる
・国語や社会や数学などバラバラに学ぶのではなく、横断的に総合的に学ぶ
地域の文化は、学校建築のデザインやカリキュラム開発の基本となる
右下写真は、2002年の仙台市立南小泉小学校6年生の地下鉄東西線プロジェクト
ライトテーブルを使ってレオナルドダヴィンチの自画像をトレースしながら、
線や図を描く練習をする小学4年生
建築と子供たちの展示
持ち運びができるロール状の展示パネルになっている

講演会終了後、テーラー先生のお招きによる昼食会(会場:マッジャノズ リトルイタリー)が開かれました。この会には、リン・テーラーさん(2013年ニューヨーク州ケープヴィンセントで宿泊したメープルグローブのオーナー)、先生の娘さんたちとお孫さん(メレディスさん、キムさん、スージーさん、キムさんの娘さんのマライアさん)、アルバカーキの小学校教師オースティンさんとカタリーナさんご夫妻、AIAアルバカーキ支部事務局のジェンさん、酒井さんなど17名と、講演会の司会者クレッグさんも参加し、テーラー先生を囲んで歓談。建築と子供たちといろいろな人たちとのつながりが少し見えてきました。娘さんたちは、子供のころから資料づくりなどテーラー先生の手伝いをしてきたそうで、ご家族のサポートが大きかったのだと知りました。
夕方、ラスベガスからアリゾナ州フェニックス経由で、アルバカーキに移動。夜、空港近くのホテルに到着。少し前に着いていた、建築と子どもたちデザインLABO関西のメンバー2名と合流しました。










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